私の考えでは、トレーディングは期待値を上げる機会だけを求めて行うべきだ。
システムトレード 基本と原則 第9章 売買ルール Methodology No. 3487
“システムトレード 基本と原則” の著者である、ブレント・ペンフォールドさんは、引用のように、「トレーディングは期待値を上げる機会だけを求めて行うべきだ」、と言っています。
その具体的な意味を教えてくれた説明を書いてみたいと思います。
お題
勝率 30% で全勝するには?
こんなお題でした。 たとえば、 10 回のうち 3 回しか勝っていないのに 10 回勝った、というような矛盾したお題です。
条件
矛盾したお題なので、発想を変える必要があるようです。
それには条件があるようで、次のような内容の条件でした。
- 個々のトレードではなく、全部のトレードで考える
- 個々のトレードの損益を平均して、1 トレード当たりの損益にする
- 勝ちトレードも、負けトレードも平均した損益だけ得られたこととして捉える、と負けトレードも勝ちトレードと捉えられる(平均した損益がプラスであること)、勝った・負けたは結果論に過ぎない
例
直近、 10 トレードの結果が次の場合の例で考えてみます。
No. | 損益 |
---|---|
1 | -20,000 |
2 | 100,000 |
3 | -23,000 |
4 | -22,000 |
5 | -21,000 |
6 | 110,000 |
7 | -26,000 |
8 | -25,000 |
9 | -24,000 |
10 | 120,000 |
損益の合計は 169,000 円 です。 全部のトレードとしては利益の出たトレードのようです。
これを平均すると、
169,000 円 ÷ 10 トレード = 16,900 円
1 トレード当たり 16,900 円の利益が出たことになるようです。
直近、 10 トレードのうち、勝ちは 3 回、負けは 7 回で、勝率は 30% になります。 それぞれの負けは 20,000 円程度出てしまっていて、 7 回もあります。 が、この負けトレードも、 負けたのではなく、 16,900 円の利益のトレードをした と捉えるということのようです。
個々のトレードの勝った、負けたは結果論でしかなくて、どれも 16,900 円の利益を生み出すトレードなんです。
整理
“期待値” って、言葉や計算式としては知っていたのですが、それは、次の記事で書いていたことだったりします。
ただ、まだ実践で活かせる形としては理解していなかったのだと感じました。
だから、負けトレードは負けとして認識していましたし、負けると気分が落ち込みもしました。 でも、今はあまり負けトレードを負けと認識しなくなったように思います。
ただし、この前提として、検証によって自分の売買ルールの期待値が把握できていること、が必須だと思います。 統計的に期待値がプラスであることが検証で証明できているからこそ 、負けトレードも○○円の利益のトレードをした、と言えるのだと思います。
期待値が重要であると主張するトレーダー
書籍から引用してみたいと思います。
続マーケットの魔術師(トム・クローガス、アート・コリンズ)
(トム・クローガス)
利益が出たというだけで、正しかったことにはならない。 また、損をしただけで、間違っていたことにもならない。 すべては確率の問題なんだ。 勝率八〇%の賭けをして負けたからといって、それが間違った選択だったという意味にはならない、ということだ。
続マーケットの魔術師 第3章 トム・クローガス No. 2053
(アート・コリンズ)
私の見解では、トレードの判断が正しかったかどうかは、勝ったか負けたかでは決まらない。 再び同じ事実に直面した場合に、また同じ判断をするかどうかで決まるんだ(利益が出る手順を持っていると仮定しての話)。
続マーケットの魔術師 第3章 トム・クローガス No. 2059
マーケットの魔術師は 6 冊のシリーズを持っていて、メモを読み返してみたのですが、あまり残していなくて… それとも出てくるトレーダーが “期待値が重要” とは言ってなかったのか… これくらいしか引用するものがありませんでした。
この引用の中では “期待値” という言葉は出てきていないものの、 “期待値を理由にトレードをする” ことを言っているのだと思います。
高勝率トレード学のススメ(マーセル・リンク)
これからがいよいよバックテストの核心部分である。 つまり、システムが正の期待値を持つ良いシステムであるかどうかをテスト結果から判断するのである。 システムが正の期待値も持つかどうかは、システムを判断するうえできわめて重要な要素だ。 なぜなら、トレーダーが有利な立場にあるかどうかは、システムが正の期待値を持つかどうかで決まってくるからである。 有利な立場になければ、トレードすべきではない。
高勝率トレード学のススメ 第4部 プランに基づくトレーディング No. 5228
マーセル・リンクさんも期待値が正のシステムでトレードすることを言っています。 そうでなければ、トレードすべきではない、とも言っています。
自分も今は、本当に、そう思っています。 以前は、期待値も把握せずに、自分の売買ルールも曖昧なまま、トレードしていたんだなあ、と感じています。
システムトレード 基本と原則(ブレント・ペンフォールド)
明らかに、売買ルールの開発で勝率はそれほど重要ではない。 重要なのは、かなり確かなプラスの期待値を持つ売買ルールを作ることだ。 期待値は勝率とペイオフレシオから成り立っている。 リスクマネジャーであるあなたは勝率ではなく、期待値を上げるように売買ルールを開発する必要がある。 いったんマーケットに参加したら、勝率ではなく期待値を理由にトレードを行わなければならない。
システムトレード 基本と原則 第4章 原則2--自己啓発 Principle Two : Enlightenment No. 1348
- リスクマネジャーであるあなたは期待値と機会を上げる売買ルールを開発しなければならない。
- トレーダーとしてのあなたは勝率ではなく、期待値と機会を理由にトレードを行う。
システムトレード 基本と原則 第4章 原則2--自己啓発 Principle Two : Enlightenment No. 1379
仕掛けは極めて大切だ。 それによって損切りの逆指値を置く位置や当初のリスク、損失の可能性がある額そのものが決まる。 利益と比べて損失がどれほど大きいかは直接、期待値に影響を及ぼすのだ! 思い出そう。 トレードを行うのは、期待値を上げる機会があるからだ。
システムトレード 基本と原則 第9章 売買ルール Methodology No. 3304
私の考えでは、トレーディングは期待値を上げる機会だけを求めて行うべきだ。
システムトレード 基本と原則 第9章 売買ルール Methodology No. 3487
あなたが常に頭の片隅に置いておくべきことがある。 トレンドトレーダーは期待値を上げる機会があると考えるからトレードを行うだけで、すぐに利益を手にしたり自分の正しさを証明したりするためにトレードを行うわけではない。 期待値を上げる機会があるからトレードを行うのだ。 それは長い期間にわたって多くのトレードを行うことによってしか達成できない。 途中で多くの損失を被ることによってのみ達成できるものだ。 期待値は勝ちトレードと負けトレードからなる。
システムトレード 基本と原則 第9章 売買ルール Methodology No. 3506
しつこく繰り返すようで、申し訳ない。 だが、これを頭にたたき込んでほしいのだ。 もう一度言わせてもらいたい。 トレンドトレーディングを行うときには、この単純な目標を思い出す必要がある。 すぐに利益を手にするためにトレードを行っているのではない。 自分が正しいということを証明するためや、自分の相場分析が正しいと証明するためにトレードを行っているのではない。 相場の方向を選び出すためや、相場に取り組むスリルを味わうためにトレードを行うのではない。 期待値を上げる機会があると考えて、トレンドの方向と考えるところでトレードを行うだけだ。
システムトレード 基本と原則 第9章 売買ルール Methodology No. 3533
ブレント・ペンフォールドさんの著書である “システムトレード 基本と原則” にたくさん引用する箇所がありました。
ブレント・ペンフォールドさんは “期待値を理由にトレードをする” ことを重要視しています。 “しつこく繰り返すようで、申し訳ない。” って書くくらいですからね。
にもかかわらず、自分は、その重要性をちゃんと理解していなかったんだな、と思います。
引用の中の “トレーディングは期待値を上げる機会 だけ を求めて行うべきだ。” のところ、ここが特に重要なんじゃないかと思っています。 強調した “だけ” がポイントで、トレードをする理由は、ここだけだと言っています。
そうでなければ、トレードをする理由にはならない。
トレードをしてはいけない。
だから、相場観に自信があったとしても、上がる可能性が高いだけでは買う理由にならないし、下がる可能性が高いだけでは売る理由にはなりません。 そうではなくて、そこが、期待値を上げる機会であるからこそ、初めてトレードをする理由になりえるのです。
新版 魔術師たちの心理学(バン・K・タープ)
あなたのトレードや投資の結果は、システムの期待値との関係からあなたが犯した過ちを差し引いたものになる。
新版 魔術師たちの心理学 第4部 学習してきたことをひとつにまとめ上げる No.9560
統計的には、検証で得られた期待値の通りに収束していく結果になるけれど、検証でやったことをやれないと、その分だけ期待値から外れた結果になる、ということだと思います。
“期待値を理由にトレードをする” とは言っていないけれど、バン・K・タープ博士もそれに近いことを言っているんじゃないかと思っています。
終わり
この説明をしてくれた方も言っていたのですが、これは、一つの捉え方なので、すべての人がこのように捉える必要はありません。 人によっては、この説明で誤った解釈をしてしまう人もいるかもしれませんし。
人それぞれ経験が違うので、何がきっかけでブレイクスルーするか、も人それぞれです。 自分の場合は、この説明を受ける前に、引用した書籍を読んでいたにもかかわらず、受けた説明のような捉え方ができていなかったのですから。
だから、伝え方も大切だ、と思いました。