市場の値動きは変わります

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『複雑で単純な世界』を読んで、市場の値動きは変わるから手法はいずれ通用しなくなると、改めて感じたことを書いておきます。

複雑性科学

最初に、この本で扱っている分野は複雑性科学というものらしいです。

複雑性科学は「相互作用をしている多数の要素の集合で生じる現象の研究」と見なすことができる。

複雑で単純な世界 第1章 単純な要素、複雑な現象


複雑性科学の究極の目標は、こうした創発現象--とりわけ重要なのは、恐ろしい結果をもたらしかねない市場の暴落、交通渋滞、感染症の世界的流行、癌をはじめとする病気、武力衝突、環境変化など--を理解し、その予測と制御を行なうことである。

複雑で単純な世界 第1章 単純な要素、複雑な現象

ざっくり、上のような記載から複雑性科学を認識しました。

複雑性の条件

その複雑性には、次の 8 つの条件があるようです。

  1. その系に、相互作用をしている多数の要素、すなわち「エージェント」の集団が含まれていること。
  2. 系の構成要素が記憶、すなわち「フィードバック」の影響を受けていること。
  3. 系を構成する要素が過去の結果にもとづいて戦略を変更できること。
  4. 一般には「開いた」系であること。
  5. 「生きている」ように見える系であること。
  6. 創発現象が見られる系で、その創発現象が概して予想外のもので、極端なものになる場合があること。
  7. 創発現象が通常、「見えざる手」、すなわち全体を制御する中心的な存在なしで生じること。
  8. 秩序ある挙動と無秩序な挙動の複雑な組み合わせを示す系であること。

複雑で単純な世界 第1章 単純な要素、複雑な現象

値動きが変わる理由に関係するところは 1, 2, 3 になると思っています。

市場の説明の前に、先の条件の中に出てきた「系」についても曖昧な理解だったので調べてみました。

自然科学における系(けい、英語: system)とは、宇宙(世界、ユニバース、the universe)の一部のうち、考察の対象として注目している部分である[1][2]。 分野や考察の内容に応じて力学系、生態系、太陽系、実験系などというように用いられる。 システムの記事も参照。

系 (自然科学) - Wikipedia

系は、考察の対象として注目している部分のことらしいです。 だから、この記事において考察の対象として注目している部分は、「市場」ということになるのかな。

市場

複雑性の条件の 1, 2, 3 を市場に当てはめて説明した記載が次の通りです。

市場では、それぞれの構成要素(トレーダー)は買いに回るか売りに回るかを決めるために価格の動きを予測しようとしており、売りと買いの正味の需給によって、その後の値動きが決まる。 こうして生じた値動きが今度はトレーダーにフィードバックされ、トレーダーはその情報を利用して、次は買いに回るか売りに回るかを決める。 この循環過程がいつまでも続き、市場での値動きは、買いに回るか売りに回るかを決めるトレーダーに絶えずフィードバックされている。 だれでも同じだが、トレーダーもそれまで市場でどのような動きがあったかに注意せざるをえない。 彼らは往々にして、そこに何らかのパターンを見いだす--というか、パターンを見つけたと考える。 そして、自分が理解していると考える事実、あるいは聞き知った情報に応じた行動をとる。 要するに、金融市場はフィードバックだらけなのである。 情報のフィードバックが買うか売るかの新たな決断につながり、その決断の結果が新たなフィードバックをもたらす。 こうしてフィードバックが新たな決断を生み、その決断が新たなフィードバックをもたらすという連鎖がどこまでも続いていく。

複雑で単純な世界 第6章 金融市場の動向を予測する

トレーダーの行動が値動きに反映されて、値動きの結果がトレーダーの行動に影響して、その連鎖がどこまでも続いています。 当たり前と言えば、当たり前かもしれません。

ルーレット、硬貨投げ

でも、ルーレットや硬貨投げの例を読むと、それは当たり前のことなのかな?とも思えます。

ルーレットや硬貨投げの賭けでは、このような金融市場につきもののフィードバックは生じない。 ルーレットの小球も硬貨も分子からできており、非常に複雑な挙動を示すように見えても、その振る舞いは完全にニュートンの運動法則に従っている。 意思決定はいっさい行なわれておらず、したがって市場とはちがって、生じた結果を賭けに参加している人々の予測に関連づけるのは、どうやっても不可能である。 つまり、人々の予測と結果とは無関係なのだ。 同じように、だれもが天気を予測する完璧なモデルを手にしているとしても、天気はあい変らず「わが道を行き」、予測によって天気が変わることはない。 明日何を着ていけばいいかがわかるだけのことでしかない。 ところが、市場の場合はまったく異なる。 参加者の全員が完璧な予測モデルを与えられたら、そのモデルは強力なフィードバック効果のために、たちどころに完璧なモデルではなくなってしまう。 完璧な予測モデルを手にすれば、だれでも次にどう出るかを決めるのにそのモデルを利用するだろう。 だが、これが市場を劇的なまでに歪めてしまう。 たとえば、モデルが株を売るべきだと予測すれば、参加者の全員が同時に売ろうとして、だれ一人買い手に回る気になれないから、株はたちまち無価値になってしまう。 結論を言えば、どんな予測モデルも、過度に広く知られたり利用されたりするようになると、実際には市場でひと稼ぎするのに役立つどころか、所有している株の価値を損なう働きをしてしまう。

複雑で単純な世界 第6章 金融市場の動向を予測する

ルーレットでは、参加者の全員が 5 に賭けたとしても、結果はそれに影響されることはありません。 1 が出ることもあるし、 2 が出ることもあるし、 3 が出ることもあるし、…。 硬貨投げでは、参加者の全員が表に賭けたとしても、結果はそれに影響されることはありません。 表が出ることもあるし、裏が出ることもあるし。 その振る舞いは完全にニュートンの運動法則に従っているそうです。

市場の場合は、参加者の全員が買いに賭けたら…売ってくれる人がいなくなって、価格がつけられないくらい高価になってしまうのかな。 それはそれで取引が成立しなくなるのかな。 でも、参加者の行動が価格に影響するのは重要なポイントだと感じます。

何かとの比較で見るとより理解した“気”にはなれます。

マーケットの魔術師

これって、マーケットの魔術師を読めば書いてあることだとは思います。

その当時の僕のトレードのやり方は、まるでサーファーみたいだったね。 ここだと思ったときに波の先にひょいっと乗るんだ。 だけどうまくいかなかったらすぐ降りてしまう。 だからほとんどリスクをとらないで、何百ポイントも狙っていたんだ。 その波乗りテクニックは、フロアを離れてデスク・トレーダーになってからもよく使ったよ。 そのときはそのトレードが非常にうまくいってたけど、今の市場じゃ通用しないと思うね。

Q それは、市場が荒れ易くなったからなの。

その通り。 当時はその日のイントラデイのチャート・ポイントに来たら、ぱっとどちらかに離れ、戻ってくることはなかったけれど、最近はよく戻ってきてしまう。

Q どうしてなんだと思う。

たぶん、皆がそのテクニックを使い出してしまったからだと思う。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 マイケル・マーカス


Q 市場が徐々に洗練されてきているために、なかなか条件に合うようなトレードが難しくなってきているということかい。

そうだよ。 僕がトレードを始めたときより、プロのトレーダーがすごく増えたからだと思う。 昔はエド・スィコータやアモス・ホステターの教えてくれた考え方を守っていれば儲けることができたけど、今は皆がそれを知ってしまっているし、トレーディングルームは頭のいいトレーダーやコンピューターでいっぱいだからね。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 マイケル・マーカス


Q 比較的小さな投機家たちが常にミスを繰り返していたのに対して、プロのファンドマネジャーたちがより投機的なトレードをするようになってしまったために、この五年から一〇年の間に市場は変わってしまったのかな。

ああ、確かに変わった。 その証拠としてあのリチャード・デニスがいい例だ。 何年もの間うまくやってきたけど、一九八八年に、彼はファンドの半分以上を飛ばしてしまったじゃないか。 もうトレンドフォロー・システムは通用しないよ。 問題はこうさ、一度君がトレンドを見定めてポジションをとったとする。 だけど、そのときは他のヤツももう同じポジションを持っていて、後から買いにくるヤツはいないんだ。 だから、ちょっと相場の方向が変わったら、君は叩き出されてしまうってわけさ。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 マイケル・マーカス


市場も物理学のハイゼンベルグの唱えている原理と非常に似たところがあって、多くの人が注目すればするほど、その注目するという行為によって物事の確率が変わってしまうんだ。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 ブルース・コフナー


Q トレンドフォロー・システムがだんだん広まれば広まるほど、相場に対する同じようなアプローチが増えることになって、逆にその効率は悪くなってきているということなのですか。

そう思う。 すごいインフレの時代でも来ないかぎり単純なトレンドフォロー・システムがうまく機能するのは難しくなっている。 だから、安定していてインフレ率の低いような期間だと、さまざまなテクニカル・システムがお互いに効果を相殺してしまうようになって、うまくいくはずがないんだ。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 ブルース・コフナー


Q ダマシが多発するというのは、過去五~一〇年の間にコンピューターによるトレンドフォロー・システムの売買が著しい増加を遂げたことに関係があると思いますか。 あまりにも多くの人々が同じことをやって、お互いの邪魔になっているのではありませんか。

そう、それは疑う余地がない。 そして、それはテクニカル・トレーディングがファンダメンタル・トレーディングに勝利したことを示している。 皮肉なことだが、その勝利はテクニカル・トレーディングの価値を低めてしまった。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 リチャード・デニス


Q トレンドフォロー・システムが機能しなくなる日がいつかくると思いますか。

簡単に発見でき、すぐに思いつくトレンドフォロー・システムが有効でなくなる日はやがて来るだろう。 良いシステムを開発するのは一層難しくなるだろう。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 リチャード・デニス


Q 優れたシステムは優れたトレーダーと競い合えると思いますか。

システムは無限の計算力を有するという利点があるから、優れたトレーダーよりも優れたシステムの方が効率的にトレードできるかもしれない。 結局、すべてのトレードの判断は問題解決過程の産物だ。 それが人間によるものなのかそれ以外のものによるのかにかかわらずだ。 しかし、変化し続ける相場のパターンを解き明かしていくことの複雑さゆえ、優れたトレーダーは通常優れたシステムを上回る成果を上げることができる。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 ポール・チューダー・ジョーンズ


Q それは自分の判断の方がより信頼性が高いからですか。 それとも、システムが以前ほどうまく機能していないからですか。

今は非常に多くの人がシステムを使っているので、以前ほどうまく機能しなくなった。 同じことをやる人が多くなりすぎたときには、市場はいつも調整局面に入るんだ。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 ゲーリー・ビールフェルド


Q 近ごろはプロの運用者の参加が多くなってきたために、今の市場は五年か一〇年前の市場と比べて違ってきているとは思いませんか。

いや、思わない。 昔もそうであったように、市場は五年前や一〇年前と同じだ。 なぜならかって、そうであったと同じように変わり続けているからだ。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 エド・スィコータ


Q 市場が変化する、あるいは将来が過去とまったく違ってしまう、という可能性はないのでしょうか。

市場は変わるかもしれないが、人間は変わらないだろう。

マーケットの魔術師 第一章 先物と通貨 ラリー・ハイト

マーケットの魔術師の第一章から抜粋してみました。 思った以上に市場の値動きが変わることについて語っているところがたくさんありました。

終わり

それでもこの本を読んで良かったと思います。

  • 交通渋滞
  • 感染症の世界的流行
  • 癌をはじめとする病気
  • 武力衝突
  • 環境変化

これら市場以外の事例と比較して見ることで、より市場のことを理解した“気”になれたからです。

それから、市場以外にも当てはめられる理論なので、より普遍的だと思います。

[形動]広く行き渡るさま。極めて多くの物事にあてはまるさま。「生物に共通の普遍的な性質」

普遍的(ふへんてき)の意味 - goo国語辞書

普遍的なので、より退場するリスクを小さくできてる“気”にもなれます。

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