なぜ通貨を取引するのですか?

前回の記事で国際決済銀行のデータを見ていて思ったことを書いてみます。

国別の 1 日当たり外国為替取引額(2016 年)

国際決済銀行のデータには国別の 1 日当たりの取引額がありました。 1 位~ 10 位までの取引額は次の通りでした。

  1. イギリス(2兆4260億ドル)
  2. アメリカ(1兆2720億ドル)
  3. シンガポール(5170億ドル)
  4. 香港(4370億ドル)
  5. 日本(3990億ドル)
  6. フランス(1810億ドル)
  7. スイス(1560億ドル)
  8. オーストラリア(1350億ドル)
  9. ドイツ(1160億ドル)
  10. デンマーク(1010億ドル)

合計すると 5 兆 7400 億ドルです。 1 ドル 110 円とすると 631 兆 4000 億円です。

参考として東京証券取引所市場第一部の 2018/08/17 18:00 の売買代金は 1,845,573 百万円でした。 株式・債券市況 | 日本取引所グループの本日の市況からもってきました。 1.8 兆円くらいです。

もう一つ参考として国債の売買高は 1,061,136 億円でした。 国債投資家別売買高 | 日本証券業協会からもってきました。 100 兆円くらいです。 これは 2018 年 4 月分なので 21 営業日で割ると 4.76 兆円くらいです。

改めて外国為替市場の流動性の高さを感じました。

即答クイズだ。

「世界で最大の金融市場は何か?」

株式?

否である。たとえ世界中の株式市場を足して合わせたとしても、最大ではない。

国債に決ってる?

世界中で発行された国債の額を考えてみたまえ?

なかなかいい答えだ。でも、ノー。たとえ世界中の有価証券市場を足して合わせたとしてもだ。

正解は、通貨。

通貨の取引量に比べれば、株や国債などの金融取引は豆つぶのようなものである。

新マーケットの魔術師 No.337 ジャック・D・シュワッガー

日本の一部の株式市場と債券市場の取引量しか調べていませんが、やっぱり、株や国債などの金融取引は豆つぶのようなものである、のかもしれません。

Q 通貨をトレードするとき、インターバンク市場と先物市場とではどちらをよく使いますか。

IMM (インターナショナル・マネタリー・マーケットはシカゴ・マーカンタイル取引所の系列で、世界最大の通貨先物取引所)とのアービトラージをやるとき以外は、ほとんどインターバンク市場を使っている。 流動性が全然高いしコストも低い、それに二四時間開いているからね。 僕みたいに二四時間トレードしている者にとっては、当然だけどね。

マーケットの魔術師 No.1298 ブルース・コフナー

600 兆円の取引量のほとんどはインターバンク市場なのかもしれません。 IMM は通貨先物の取引所としては世界最大かもしれないけれども、インターバンク市場と比べると豆つぶのようなものなのかもしれません。

日本のデイトレーダーの方から教材を購入して学んできたりしたのですが、マーケットの魔術師に出てくるトレーダーは、こういうところが別世界のように感じます。 日本のデイトレーダーでインターバンク市場でトレードしている人はいるのかなあ? 「インターバンク市場は流動性が全然高い」って、実感を持って言えるデイトレーダーは日本にいるのかなあ?

わたしには想像もできません。

Q 世界の通貨市場の中で、先物市場のシェアがあまり大きくならないのはなぜでしょうか。

それにはいくつか理由がある。 まず第一に、ヘッジをしようとした場合、ヘッジする額の単位や受け渡しを行う日が、そのときどきで全然違うのが普通なんだ。 例えば、僕が四月一二日に三六〇万ドルをヘッジしなければならないとして、インターバンク市場であれば銀行はそれを難なく引き受けてくれるけれども、先物市場では受け渡し日もそのサイズも固定されてしまっているから、ヘッジャーは正確にはヘッジしにくい。

Q つまり、インターバンク市場であればどんな顧客のヘッジ・ニーズにも応えられるから、先物市場が入り込む余地がないということですね。

その通り。 それとそのような取引は通常の銀行取引の一環として行われている。 ヘッジャーは利益が固定されていることを銀行に示し、それに対して融資を受けるということがよくあるんだ。

マーケットの魔術師 No.1328 ブルース・コフナー

通貨先物市場があまり大きくならない理由も言ってました。

これを機に意識しておこうと思いました。

通貨別の外国為替世界シェア(2016 年)

国際決済銀行のデータに通貨別のシェアもありました。

  1. USD(87.6%)
  2. EUR(31.4%)
  3. JPY(21.6%)
  4. GBP(12.8%)
  5. AUD(6.9%)

やっぱり米ドルが圧倒的に多いです。 こうして数字で見るとその多さに驚きます。

通貨ペア別の外国為替世界シェア(2016 年)

通貨ペア別のシェアもありました。

  1. USD/EUR(23.1%)
  2. USD/JPY(17.8%)
  3. USD/GBP(9.3%)
  4. USD/AUD(5.2%)
  5. USD/CAD(4.3%)
  6. USD/CNY(3.8%)
  7. USD/CHF(3.6%)
  8. EUR/GBP(2.0%)
  9. USD/MXN(1.8%)
  10. USD/SGD(1.6%)
  11. EUR/JPY(1.6%)

11 位と、中途半端なところまで記載しました。 ユーロ/円がどれくらいかを把握しておきたかったからです。

単独の通貨別のシェアで見るとユーロは 2 位で、円は 3 位なのに、通貨ペアで見るとユーロ/円は 11 位の 1.6% と、こんなにも低いんだと驚きました。

この 1.6% はどれくらいの大きさなのでしょうか? 600 兆円のうちの 1.6% だとすると 9.6 兆円くらいです。 上の株式の 1.8 兆円、債券の 4.76 兆円とくらべてもまだ大きいくらいでした。

たった 1.6% なので取引を控えようかとも思いましたが、あまり問題にするようなものでもなさそうでした。

仮想通貨の取引高

外国為替の取引高を調べていて、仮想通貨の取引高も気になったので調べてみました。

全ての仮想通貨取引所における一日の平均取引高は、17年12月に170億ドルに迫った。18年3月は91億ドルに減り、4月前半は74億ドルまで減った。

仮想通貨の取引高、ピーク時から半減 過熱感後退で | ロイター

これは 2018 年 4 月 23 日の記事です。

取引所内で扱うすべての仮想通貨のことを言っているのかな? それによるとピークのときで 170 億ドルみたいです。 1 ドル 110 円として 1.8 兆円くらいです。

ピークのときでさえ、すべての仮想通貨取引所を合わせても東京証券取引所市場第一部と同じくらいの取引高しかないみたいでした。

終わり

通貨は流動性が高いという認識がありました。 そういう理由で取引を続けてきていました。

データを見てみて改めて流動性が高そうだと認識することができました。